不動産を購入するときに、住宅ローンを利用する人は多いです。住宅ローンの審査には、回収リスクを考えた、安定収入の有無などの属性審査というものがあります。
この属性審査に通りやすい人のことを高属性といいますが、高属性の人で何らの落ち度がないにも関わらず、融資が否決されてしまったことがありました。どうしてこういった事が起こってしまうのでしょう。理由は信用情報機関のシステムにありました。今回はその時のエピソードのお話です。
※重要な判断に関与する記事です。判断をされる際には、必ずご自身で専門家等に事実確認をお願いいたします。
高属性なのに何故か否決されてしまう
都内のマンションの売却
都内でマンションを販売していた時の話です。筆者は不動産の売主として、不動産の販売をしていましたが、その販売していた都内のマンションに対して、不動産仲介業者が、お客様を連れてきました。
そのお客様は、公務員で勤続15年、現金資産も充分に保有しており、年収に対する融資比率も全く問題ない方でした。一般的に、公務員は、雇用も収入も安定しているため、住宅ローンの融資の審査が通過しやすい高属性とされています。
この方は、元々マンションを住宅ローンで保有していた方なのですが、住み替えをされるということで、本物件への申し込みより数週間前に、そのマンションを売却されたそうです。
ですから、今回の申し込みに当たり、借入等も全くない。という方でした。
申し込み後、謎の融資否決
明らかに高属性の方で、融資の懸念要素が全くない方でしたので、売主サイドとしては、特に心配もなく、粛々と契約への手続きを進めておりました。
その矢先、客付仲介会社からの突然の連絡。融資が否決されてしまったとのことです。
こういったケースは、稀にあるにはあるのですが、大抵何か申告漏れの借り入れなどがあり、それが影響していることが殆どです。今回もその類だと思って、買主様に状況をヒアリングしたのですが、全く身に覚えがないとのこと。
客付仲介会社としても、お客様の申告を信じなければならないので、他の金融機関を当たることにしました。しかし、なぜか否決ばかりで、唯一通ったのが公務員共済でした。
公務員共済は、公務員の方が利用できる制度で、その中に住宅貸付制度もあります。金利はやや高いのですが、勤続年数で審査をしますので、原則、いわゆる信用協会の審査をしません。 ですから、他に借り入れがあったとしても、融資を承認してくれる点が特徴です。
今回は、その共済のみ承認されましたので、やはり、内々で他の借り入れがあったのだろうという推定で契約に至ったのです。お客様の個人のお話ですので、我々には、これ以上踏み込むことはできません。
それでも全く身に覚えがない
そういった状態ではありましたが、お客様が購入を強くご希望されましたので、仲介業者の意向もあり、そのまま取引を終えました。しかし、その取引の間、お客様とお話をしていても、そういった事を隠しているような方では全く無く、本当に身に覚えがないようでした。不可思議な事もあるのだな。と思ってその取引は終了いたしました。
しかし、なんとなくの引っ掛かりが心に残ったのです。
その後月日が流れましたが、何度もこの事例のことは気になってしまって、経緯を何度か思い返してみたのです。
ある時「申し込み数週間前に、前の持ち家を売却し、その時に債務を全額返済した」というフレーズを思い出し、全国銀行個人信用情報センターという、銀行系の信用情報を取り扱っている機関に問い合わせをしてみることにしました。
質問の内容はこのような内容です。「債務を完済したとして、それが個人信用情報センターに反映されるのは、どのくらいの期間が必要ですか?」
全国銀行個人信用情報センターからの回答は、「1か月程度の期間反映されないことがあります。」でした。
この事例においては、「前の持ち家を売却し、その時の債務は全額返済した」のが「申し込み数週間前」でしたので、個人信用情報センターに、その返済の反映がなされてなかったという結論を出すことができました。
直近での一括返済は、申告が必要
この方の場合は、元々の持ち家の売却で絡んだ仲介業者と、今回の購入で絡んだ仲介業者が全く別の方でしたので、その返済に関する事実の情報共有が上手く行われていませんでした。
ですから、新たな審査の際に、直近での一括返済があった事実を、審査する金融機関に伝えることなく、融資審査をしていたと思われます。
この事実を伝えないで融資の審査をしてしまった場合、金融機関側からすると、既存住宅ローンの借り入れがあるのに、それを隠してさらに住宅ローンを組もうとしている。と思われてしまうでしょう。
これは、本人は何も隠し事をしていないのに、融資の審査を否決されてしまうという事が起こりえる事例として、注意すべき事例です。
こういう状況の方は、審査の申し込みの際、一括返済の事実を告げてから、金融機関に申し込みすることが必要です。
本人に認識が無いのに、反映の遅れなどで、信用情報に違う情報が載ってしまっていることは、稀にあるようです。この信用情報は本人でも確認することができますので、融資審査を申し込む際には、自分で確認することも必要です。
これ以外の事例ですと、携帯電話の契約で、携帯端末を割賦購入している場合にも似たようなことが起こります。携帯端末を割賦購入している場合は、携帯料金の延滞も信用情報に載ってしまいますから、携帯料金の滞納が生じてしまった履歴が残ってしまい、否決されることがあります。いずれも要注意事例ですね。