マンションは、一般的に同じ建物を、多数の人間で共同所有する形態をとります。これを区分所有建物というのですが、皆で同じ建物を保有するために、ある程度の秩序を持った管理が必要とされます。
そこで区分所有法という法律があり、そのマンションの所有者で管理組合という組織を作って、管理をすることになるのですが、結局管理に詳しくない人の集まりですので、プロのマンション管理会社を入れて管理するのが一般的です。
しかし、何らかの理由で、管理会社を入れずに、自分たちで管理するマンションがあります。これを自主管理といいます。
※重要な判断に関与する記事です。判断をされる際には、必ずご自身で専門家等に事実確認をお願いいたします。
自主管理のマンションに潜むワナ
不動産も法律も知らない人たちの集まり
マンションの管理組合員の殆どは、ただそのマンションを購入しただけの人です。不動産に関しての専門的な知識を持っている人はごく少数です。その割に、マンションの管理には、会計や建築、法令等の幅広い知識が必要とされます。
ですので、通常は管理会社というマンション管理の専門会社に、外部委託という形で管理を委託するのです。客観的視点で専門的な見解を述べてくれるので、最低限の秩序が守られるのが特徴です。
自主管理のマンションを購入したら
ところが、管理会社を入れず自主管理しているマンションも、売買市場に登場するので、普通に取引が可能です。この様なマンションを買ってしまうと、主観的なルールが適用されていることが多く、苦労することが多いです。
今まで筆者が体験した事例を元に、その危険性を解説いたします。
理事長が管理費を着服している
神奈川県の某マンションのお話です。このマンションの一室の所有者が、ローンの滞納をして競売にかかりました。しかし、競売でも買い手がつかず、特売という一日で終了する競りになり、とある人が破格で購入をしたのです。
一見、何の変哲もないマンションですが、何故、この様な破格の値付けになってしまったのでしょう。
このマンションは、管理費や修繕積立金としてとして月々数万円を支払う約束事がありました。
管理費は、マンションの管理の為に使うお金で、主に共用部の電気代や、清掃代などに使うお金です。修繕積立金は、マンションが老朽化したときに大規模修繕工事をする為のお金です。この修繕積立金が無いと、マンションが将来老朽化した際に、修繕することができなくなってしまいますので、大事なお金です。
そのような大事なお金ですが、そのお金の管理は、管理組合の理事長が行うことになります。全員から徴取したお金ですので、積み上げると〇千万円の莫大な金額になります。この莫大なお金を、管理組合の理事長が個人管理することになる訳です。
なんと、このマンションでは、理事長がその管理費と修繕積立金をすべて着服して逃げてしまっていました。今まで積み上げたお金が皆無ですので、今後の修繕計画は全く立てられず、さらに管理組合も機能不全に陥っていました。
このような、無秩序のマンションを購入したい人はなかなかいませんので、マンションの価値が一気に下落してしまったようです。自主管理のマンションの最悪のケースでは、このように、競売でも買い手がつかないほどの状態になってしまうことがあります。
その後、組合を復活し、管理会社を入れて、とりあえずは体裁を整えましたが、無くなってしまった修繕積立金は返ってきません。
管理組合が、修繕工事をしてくれない
さいたま市の某大規模団地では、こんなことがありました。
マンションの共用部分は、全員で維持管理しないと大変なことになりますので、通常は、共用部分の所有権は、管理規約で区分所有者の共有という形で設定されています。
共有物から発生した漏水などは、共有物の所有者の責任となりますので、この共有部分からの雨漏りは、管理組合が修繕しなければならない箇所となります。
この団地の一室を購入した人が、雨漏りに気づき、工務店に調査を依頼したところ、共用部分からの漏水であると判明しました。前述した通り、共用部分からの雨漏りは、管理組合が管理組合の費用負担で修理をする箇所となりますので、管理組合に修繕の請求をしました。
ところが、管理組合は修繕工事を拒否。
理事会に出席し、管理規約、民法、区分所有法のお話をさせていただいたのですが、工事はできない。の主張を繰り返されるのみでした。
工事ができない理由は、「こういった工事をやりだすと、キリが無い。今までも我慢してもらっている。あなたも、我々と対立すると居心地が悪くなるから、自分で工事しなさい」との事でした。
この団地は総戸数が400戸超もある、大型団地です。よって修繕積立金も5億程度保有しています。このような方々が5億円もの大金を管理している状況に背筋が凍る思いでした。
この事例は、管理組合に対して訴訟をすれば、簡単に勝訴はとれるでしょう。しかし、根本的な構造は今後も変わりません。
マンション管理の法整備
自主管理のマンションの恐ろしさ、ご理解いただけましたでしょうか?
ここに挙げた事例は一部ですので、ほとんどの自主管理のマンションは適正に管理されています。
ただし、一部マンションには、こういった危険性がありますので、自主管理のマンションを購入される際には、注意が必要です。
このように、村社会の村長のような方が、何億円も管理されているのが、マンション管理における現状の問題点です。この点、国交省に問い合わせをしても、問題意識は感じているが手を出せない。という回答しか得られません。
全国にこのような状態のマンションは一定数存在すると思いますので、行政主導でなんらかの管理体制を整えてもらいたいものです。
しかしながら、管理会社に委託すれば、安心です。という訳でもありません。管理会社から見ても、所詮は素人集団ですので、あの手この手で管理組合のお金を搾取しようと働きかけてくるような悪質な会社もあります。特に大規模修繕工事には要注意です。
筆者の経験上、まともな金額での大規模修繕工事はあまり見ません。大規模修繕工事の費用が、やたら高いことは無いでしょうか?
この問題は区分所有者が自衛するしかありません。