しかし、すべての不動産に資産価値があるわけではないのです。不動産市場には、買ってはいけない不動産というのも一定数存在します。今回は、その買ってはいけない不動産について語ります
※重要な判断に関与する記事です。判断をされる際には、必ずご自身で専門家等に事実確認をお願いいたします。
買ってはいけない不動産とは?
不動産購入の失敗の定義
不動産を買う目的は人それぞれ様々です。居住目的もあれば、投資目的、店舗経営などなど、その目的によって失敗の定義は異なります。
個別の失敗例は様々で、個別で解説することは困難なので、今回は、どの目的で購入したとしても失敗と捉えられるポイントに焦点をあてて話をしていきたいと思います。
不動産には出口戦略が大事と良く語られます。出口戦略とは、売却を想定するという事で、売却できる不動産を売却できる価格で購入するという戦略です。
ただ、仮に出口戦略が描けなくても、保有していてもその不動産に自分が価値を見出していればそれでもいいわけです。
ですから、この記事では、出口戦略が見えず、かつ自分も価値を感じない物件を購入してしまうことを、失敗と定義します。
不動産の出口戦略
不動産の出口戦略には、二つの要素があります。一つは、買った値段と同等か、それ以上で売るべき、という点。もう一つは、そもそも売却できる不動産を買うべきという点です。
買った値段と同等か、それ以上で売るためには
これはもう、高く買わない。という事が答えになってしまいますね。
しかし、不動産は経済市場の影響を受けてしまいます。経済市場が悪化しているときは、不動産価格も連動して下落しますし、逆もまたしかりです。
不動産保有の目的は殆どが長期保有目的ですので、この経済市場の変化を読み取るのは、不可能です。購入時期時点で高いのか安いのかわからないのです。
ですから、この要素のコントロールは基本的には無理だと言い切れます。もはや運やタイミングですね。10年後、不動産価格が下落することがわかっていたとしても、10年間不動産を買わない。という選択もなかなか取れませんし。
売却できない不動産を買わない
ですから、出口戦略として自分でコントロールできる要素は、もう一つの要素、売却できない不動産を買わないこと。となります。
では、売却できない不動産とはどういう不動産の事を言うのでしょう。
これは、資産価値がない不動産ということになります。
資産価値のない不動産
資産価値のない不動産とは、誰もが持っていたくないという不動産と言い換えられます。
人は、何も問題のないものを保有している場合、邪魔だなと思うことはあっても、無理に手放そうとは思いません。しかし、持っていることによって生活などに何らかの影響があるものは、手放したくなりますし、保有していたくなくなります。
影響があるもので一番大きい要素は、維持管理コストです。保有しているだけで利用もできず、維持管理コストだけ持っていかれる。この状態の資産は、すすんで手放したくなりますし、好んで保有したいとは思いません。
ですから、資産価値のない不動産とは、基本的に、利用できないのに維持管理コストだけが必要とされる不動産という事になります。
この状態では、出口戦略どころか、自分も持っていたくなくなりますね。このカテゴリの物件を購入してしまうことが失敗と言えるでしょう。
買ってはいけないコストのかかる不動産
維持管理コストの王様、旧耐震の擁壁
維持管理コストの王様は、旧耐震の擁壁です。
昭和55年以前に築造された旧耐震の擁壁は、建て替えの際に、耐震の補強工事が必要とされます。擁壁の作り替えや、補強工事には多額の費用が必要とされます。
また、激しい劣化をしているものは、建物の重みに耐えきれず、建物を傾けてしまったり、クラックが発生し、水漏れしたり、維持にもコストがかかります。
どれだけ安く買ったとしても、将来的な多額の出費が約束されています。買うべきではない不動産と言っても良いでしょう。
崖地の所有権
崖地沿いに建築された家の中では、その崖部分も一体の所有権となっていることがあります。宅地に利用できない土地、法地と呼ばれるものです。
広大な法地は、本来行政で管理するレベルの土地なのですが、残念ながら所有権である場合、雑草などの管理、がけ崩れの責任などが、所有者に負担としてのしかかってきますので、こちらも維持管理コストが必要とされます。
マンションの管理費・修繕積立金の額が高い
マンションの管理費や修繕積立金は、区分所有法という法律によって、マンションの所有者は支払わなければならない義務を負います。これは、所有している間ずっと、永遠に支払わなければなりません。
管理費はマンションの管理費、修繕積立金は、マンションの大規模修繕の積立金ですので、この費用自体は有益なもので、基本的には問題にはならないのですが、
これが非常に高いマンションが稀にあります。
特に多いのが、共用施設が充実しているリゾートマンションです。
バブル時代に人気があって建設されたが、今は誰も見向きもしないような地域に存在するリゾートマンションは、過疎地のマンションで積極利用ができないにも関わらず、年間何十万もの維持コストが必要となります。
過疎地の山奥のボロボロの空き家
山奥のぼろぼろな空き家も維持管理コストがかかります。過疎地の時点で、需要がないうえに、住めるようにするためには多額の修繕費が必要とされます。
また、雑草の処理、固定資産税、などなどがボディブローのように効いてきます。
熟練者ならチャレンジも
ここに挙げたようなカテゴリの不動産は、市場流通価格が10万から100万くらいで設定されていることが多いです。ぱっと見飛びつきたくなるような値段ですが、買ってしまうと、将来苦しめられる恐れがあります。
しかし、利用価値があれば、そうはなりません。
熟練者が上手に利用価値を見出した場合、大化けする可能性もあります。
例えば、田舎の過疎地の空き家などは、上手に加工すれば、田舎暮らしをしたい人にとっては良物件となりますし、過疎地のリゾートマンションも、田舎である程度管理が行き届いているマンションで老後を過ごしたい層などにマッチングすることがあります。
こういった、独自視点での出口戦略を描ける人であれば、チャレンジする価値はあるでしょう。
ここでお話したような不動産の事を、業界では負動産と呼んでいます。一般の人がこの負動産に手を出してしまうと、上手に利用できないどころか、苦労しかありません。
ものすごい安い価格で市場に出回っていますが、中途半端に手を出すと大やけどをする場合がありますので、気軽に飛びつかないよう注意が必要です。