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不動産投資で要注意!危険な交差【デッドクロス】

不動産投資を始める方は、理解しておいた方がいい【デッドクロス】という事象。この事象を理解しているかどうかで金融機関融資メインの不動産投資の成否を左右するといっても過言ではありません。
今回はそのデッドクロスの解説です。

※重要な判断に関与する記事です。判断をされる際には、必ずご自身で専門家等に事実確認をお願いいたします。

デッドクロスとは?

不動産投資の黒字倒産

不動産投資で計算上は黒字なのに、キャッシュが回らなくて倒産してしまう?そんなことが起こりえる事象があります。これは【利益】と【税金】と【元金】と【現金収入】を把握することで、理解できるようになります。まずは用語と定義を解説します。

 

減価償却と金利と経費

減価償却の仕組みは以前の記事で解説しましたが、

簡単に一言で説明すると、耐用年数の期間中使える、手元のキャッシュを使うことのない経費です。

これは、経費算入ができますので減価償却分のお金は非課税で手元に残ります。

減価償却は保有資産のうち、建物と設備の二つに適用されます。耐用年数の期間が徒過したら、この仕組みは使えなくなります。

金利とは、金融機関からお金を借りる際に、 お金を借りる側が、借りたお金に追加して支払う金額の割合のことをさします。

お金を借りるために支払う手数料のようなものです。これも経費にあたります。

 

金融機関への返済方式

金融機関への返済をする際に金利の支払い方法は二つあります。 元利均等方式と元金均等方式です。

元利均等方式とは、毎月、元金と金利の合計額を定額にして返済していく方式で、返済開始当初は金利の返済がほとんどで、返済が進むごとに元金の返済割合が高くなっていくのが特徴です。

毎月の返済額は一定ですが、 支払いを続けていくうちに、金利が減り、元金返済が増える。という事です。

元金均等返済方式は、毎月の元金返済部分を定額にする返済方式で、返済初期は金利と元金の合計額が大きくなりますが、毎月定額で元金が減っていくために、返済額は年々減っていきます。

元利均等返済よりも金利の総支払額は少なくなるのが特徴です。

元利均等方式のほうが、当初の返済額が少なくて済み、返済額がずっと定額なので 、元利均等方式を選ぶ人が多いです。また、金融機関も元利均等の方が利益がでますので、ほとんどの融資が元利均等方式によって行われているのが現状です。

 

元金の返済は経費なのか

前述した通り、金融機関への返済は、元金と金利の合計額を返済していくという形になります。

そのうち元金の返済は、借りていたお金を返すわけなので、元金返済は経費ではありません。マイナスをプラスにするだけですから。利益を返済に回しているだけということですね。

POINT
・減価償却とは… 実際にお金を使うことのない経費
・金利… お金を借りるときに支払う手数料のようなもので経費となる
・元利均等返済方式
 毎月定額の返済だが、最初は金利分が多く、徐々に金利分が減り、元本返済部分が増加
・元金均等返済方式…
 毎月の返済額は、最初は多いが、元本返済部分は一定で、金利は徐々に減っていく

 

デッドクロスが生じる仕組み

では、今まで説明していた用語を前提に、デッドクロスが生じる仕組みを解説します。

元利均等方式で融資を受けたケースでの解説ですので、金利と元金額が変動しますので、金利多・金利少という言葉を使わせてもらいます。返済初期は金利が多く、返済後期は金利が少ない、という事です。

また、減価償却は耐用年数を徒過したら使えなくなります。元金は経費ではないので、経費には含みません。ほかの経費はとりあえず考えないでおきます。

返済初期の利益は 

賃料収入 - 減価償却・金利多 = 利益→ 税額

返済初期の現金収入は

賃料収入 - 返済額 - 税額 = 現金収入

返済後期(耐用年数徒過後)の利益は 

賃料収入 -減価償却無・金利少 = 利益→ 税額

返済後期の現金収入は

賃料収入 - 返済額 - 税額 = 現金収入

となります。言葉だけではわかりずらいので、仮で数字を入れてみましょう。

賃料収入【100】 減価償却【30】 返済額【80】(金利多【50】/金利少【30】)税額30% で計算します

返済初期の利益は 

賃料収入【100】-減価償却【30】・金利多【50】=利益【20】→税額【利益×30%=6】

返済初期の現金収入は

賃料収入【100】-返済額【80】-税額【6】 = 現金収入【14】

返済後期 (耐用年数徒過後)の利益は

賃料収入【100】-減価償却【0】・金利少【30】=利益【70】→税額【利益×30%=21】

返済後期(耐用年数徒過後)の現金収入は

賃料収入【100】-返済額【80】-税額【21】= 現金収入【-1】

返済前期と返済後期を見比べてると、返済前期は利益は少ないが、現金収入が多い。返済後期は、利益が多いが、現金収入が少ない。という事象が発生しているのはご理解いただけるでしょう。

今回は賃料収入が一定という仮定にしましたが、仮に経過年数に連れて賃料収入が落ち込んでいくと考えると、後期の現金収入のマイナス幅はさらに広がっていきます。

利益が出ているのに現金収入が無くなってしまい、場合によっては倒産してしまいます。

POINT
元金返済方式で借り入れした場合。返済初期は現金収入が多いが、返済後期は少なくなる。減価償却・金利の長期シュミレーションを怠ると、黒字倒産になる可能性がある

今回は、ざっくりと数字を入れた簡単なシミュレーションですので、実際は物件毎に計算額は異なってきますし、税額を調整したり、複数の物件を保有したりとそれぞれの対応策もあります。
ここでは、考え方の原則→元利均等方式での借り入れをした場合に、将来、現金収入がマイナスになる事態が発生することがあること、を理解しておけば充分です。
デッドクロスを知ることで、実際に物件購入をする時に、現時点だけでなく、将来の収支計算への認識が生まれるでしょう。

不動産投資をする前に考えたい3つのこと