投資用不動産には賃貸借契約が付随しています。ですから、投資用不動産の売買の際には、前所有者と賃借人の間での賃貸借契約の内容を全部引き継ぐ必要があります。その中には、敷金の返還債務も含まれていますね。その敷金の承継の方法に、地域によって差があることをご存じでしょうか?
※重要な判断に関与する記事です。判断をされる際には、必ずご自身で専門家等に事実確認をお願いいたします。
敷金の承継方法が違う?
敷金債務持回り方式(関西方式)
まず、関東の考え方から説明を致しますと、通常は不動産の売買価格の合意をした後、契約前に、賃借権の引き継ぎ内容を確認し、売買価格と別で授受する金銭を計算します。
敷金は預り金ですので、売買代金と別に預かっているお金を預かっているまま移管するという考えが理にかなっています。
関東ではこれを採用して、買主が売買代金から敷金分を相殺して残額を支払う。という形での決済が行われています。
ところが、関西ではこの考え方での取引は少なく、独自の方式―敷金債務持回り方式を採用しています
敷金債務持回り方式とは、簡単にいうと、敷金債務は承継するが、金銭の授受はしないということです。
ですから、敷金は買主の持ち出しとなります。なぜこういう方式なのかはわかりませんが、こういう方式が慣例となっているようです。
この方式の場合は、買主は、あらかじめ敷金分も売買代金に含めて収支計算し、買い付けを出さなければならなくなります。
関西で物件を購入する際には、かならず敷金の債務承継の方法を確認しておきましょう
関西での利回りに注意
売買代金に敷金が含まれるということは、考え方によっては、広告などに表記されている売買代金が関東より少し高く表記されているということですので、一見高利回りに見えたとしても、敷金分を乗せて収支計算をしてみたら、実は割高な場合があります。
関西の投資用物件を購入するときには十分注意が必要です。
固都税相当額の清算も関西方式
敷金債務持回り方式でも大きな違いがあるのですが、他にも関東と関西での清算方式の違いはあります。固定資産税と都市計画税の相当額の清算方式も違うことが多いです。
固都税相当額の清算は、通常1年分を日割り計算で清算します。計算するにあたって起算日が必要なのですが、これが関東の場合は、1月1日なのですが、関西の場合は4月1日のことが多いのです。
何が起こるかというと、例えば4月1日に決済をする場合の固都税相当額の日割り計算は、関東方式ですと、1月1日から3月31日までが売主負担、それ以降が買主負担となります。関西方式ですと、4月1日から翌年の3月31日までの1年分が買主負担となります。買主が若干損をする形になりますね。
ですから、関西方式で購入して、関東方式で売却するときは、損することになりますので注意が必要です。
以上のように関西と関東では不動産取引の方法がかなり異なります。
言われてみると地域差があるのは当たり前ですが、自分の住んでいる地域の慣習が当たり前だと思い込んでしまうことは結構多いので、違う地域で不動産を検討するときはその地域の慣習をヒアリングすることが重要です。