賃貸契約で一番トラブルが生じやすいのは、退去時の修繕工事の負担割合の話し合いです。預けていた敷金が返ってくると思いきや、返還されないどころか、さらに追加で支払わなくてはいけない。こういった場合は、トラブルになりかねません。そのトラブルを防ぐために原状回復のガイドラインという指針があります。
※重要な判断に関与する記事です。判断をされる際には、必ずご自身で専門家等に事実確認をお願いいたします。
ガイドラインのポイント
①賃借人の負担部分は
国交省が発表した、原状回復のガイドラインは、国交省のサイトで読むことができます。しかし、いまいちわかりにくいです。ガイドラインは何を言いたいのかというと簡単にいいますと、
②賃借人が粗雑な使い方をして破損、劣化してしまったものを原状に戻す工事は、賃借人の負担です。
そのため、原状回復の費用負担の対象となる工事は、②の 「賃借人が粗雑な使い方をして壊れてしまったものを原状に戻す工事 」の内容の工事だけとなります。
②経過年数が考慮される
通常と違う使い方をして壊れてしまった箇所を直す工事は賃借人負担だとしても、その中には、通常の使用で劣化している部分もあるはずです。という考え方に基づいて、賃借人負担部分は下記のように考えます
賃借人負担の原状回復工事は、賃料に含まれている部分もあるため、居住年数に応じて、負担割合を減らす。
モノは年月を経るごとに、劣化していき、いずれ価値がなくなります。これに基づいた、耐用年数という考え方があります。モノには耐用年数というものがあり、残存耐用年数がなくなれば価値はゼロになる…
例えば、クロスですと、大体6年で設定されることが多いので、6年住んだら価値がゼロになります。通常使用ではない過失でクロスを破損してしまったとしても、6年住んだら、原状回復負担は不要であるという事になります。
とはいえ、価値がゼロだから何をやっていいという事でもありません。悪質な行為で破損・破壊させた場合、負担が生じます。たとえばクロスに落書きなどした場合は、耐用年数関係なく賃借人の負担になります。当たり前ですが。
③消耗品は耐用年数の考え方をしない
いわゆる消耗品については、耐用年数の考え方がそぐわないことがあります。例えば、襖紙、障子紙、畳表などは、消耗品としての色合いが強いため、これに関しては、通常と違う使い方をして交換が必要な状況になれば、消耗品の場合は、何年居住していたとしても賃借人の負担となります。
④施工箇所は全部ではなく一部
次は、施工箇所の問題です。一部が壊れてしまったとしても、それで全体の工事を負担することになると、賃借人の負担が大きすぎます。ですので、例え破損のせいで、設備の全交換が必要になったり、デザインに不都合が生じたとしても、賃借人の負担部分は、その壊れた一部に限ります。
⑤事前約束をしていた場合は、負担が必要
最後に、契約時に事前に特約をしていた場合です。例えば、退去時にクリーニング費用は賃借人の負担とする、などの特別な約束をしていて、賃借人がそれに応じていた場合は、その特約が社会通念上妥当な内容であれば、賃借人が負担する必要があります。
回復のガイドラインはこのような考え方で運用されています。基本的には賃借人が多額の原状回復工事を負担することは起こりえないと思います。
しかし、やはり一番考えたいのは、賃貸借契約とは、人のモノを借りる契約です。借りたモノは丁寧に使わなくてはいけません。丁寧に使ってさえいれば、トラブルになることはありませんので、丁寧に使うことを心がけましょう。
参考サイト:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン