この、戸建てが傾くにはある程度理由があります。
戸建ての傾く理由は大別して、施工不良によるものと、不同沈下によるものがあります。今回は、戸建ての傾きについて解説します。
※重要な判断に関与する記事です。判断をされる際には、必ずご自身で専門家等に事実確認をお願いいたします。
傾いている戸建ての見抜き方
施工不良と不同沈下
戸建ての傾きは大別して、施工不良によるものと、不同沈下によるものがあります。
施工不良とは、文字どおり、建築時の大工さんがミスをして、床が曲がってしまったり、波打ったりしてしまっている状態のことをいいます。
ただ、大工さんもプロですので、施工不良でそこまで大きな傾きが生じることはあまりないかと思われます。
もう一つは、軟弱地盤による不同沈下によるものです。これは、建築当時は傾いていなかったものが、年月を経るごとに、家に地盤が圧迫され、傾いていってしまうものです。
傾きと瑕疵担保責任(契約不適合)
傾きは一般的には、瑕疵担保責任(契約不適合)の対象だと言われています。傾いている家で生活することは、心身に影響がありますので、生活に影響がある欠陥となるためです。
しかし微々たる傾きはどの家にもありますので、一定以上の傾きがある場合に、対象となります。
判例では8/1000(1mで8mm)の傾きで瑕疵担保を認定していますが、通説では5/1000(1mで5mm)以上の傾きがあれば瑕疵担保の対象となるといわれています。
傾きの見抜き方
さて、この傾きの見抜き方です。
施工不良の傾き
まず施工不良の場合です。施工不良の場合は、全体で5/1000を超える傾きはあまりないと考えられますが、部屋の隅や廊下の一部など、特定箇所のみ傾きが生じていることがあります。
これはたとえビー玉やゴルフボールを転がしたとしても、その特定箇所で調べない限り気づけません。
スリッパを履いていると、傾きに対しての感度が下がりますので、できるならばスリッパを脱いで、戸建ての隅々に立ってみるという方法が現実的です。
一部が傾いているなら、5/1000以上も傾いていれば違和感を感じると思いますので、傾きを感じた場合、その箇所の調査を依頼しましょう。
調査はレーザーで水平を取り、調べることになりますが、傾いていても、傾きが5/1000以下の場合は、欠陥とも言いきれませんので、補修を依頼できるかどうかはわかりません。
POINT
・施工不良の傾きで5/1000を超えていることは多くない
・全体ではなく一部が傾いているのが特徴
・スリッパを脱いで体感してみる
不同沈下の傾き
不同沈下の傾きの特徴は、一部ではなく、全体が傾くのが特徴です。
全体が傾くと、建物全体に症状が生じます。外壁や室内に多数のクラックがあったり、建具が自動的に閉まってしまう、開閉がうまく動かない窓のサッシが多数ある、等の症状が現れますので、そのポイントをチェックしましょう。
また、ビー玉やゴルフボールを置いて、転がるかどうかを調べるのも有効です。ゴルフボールが自動的に転がるようですと、かなりの傾きですので、欠陥といえるレベルの傾きになるでしょう。
POINT
・不同沈下の傾きは、一部ではなく全体が傾く
・建物に顕在化している症状で疑う
・ビー玉やゴルフボールを置いてみる
将来的な不同沈下の見抜き方
不同沈下の場合は、現時点で傾きが生じていなくても、将来傾きが生じる恐れがあります。将来の傾きは、前述の方法ではチェックすることが難しいため、地勢と建築時期で疑うしかありません。
建築時期
建築時期については、建築時期が平成12年4月より前か後かで判断します。
平成12年4月に、住宅瑕疵担保履行法という法律が施行されました。この法律により、新築戸建ての構造部分に対して、10年の瑕疵担保責任が義務付けられました。
よって、この時期以降に建築された戸建ては、地盤調査と地盤補強が行われた可能性が高いので、傾きリスクは少し軽減されます。
地勢
地勢で疑う方法としては、不同沈下の原理に関わってきます。
不同沈下は、地盤が軟弱だから発生する事象です。なぜ地盤が軟弱になるかというと、地盤に水分が含まれているからです。ですから、水分が多く含まれている土地に不同沈下リスクがあります。
水は上から下に流れ、下に溜まる性質がありますので、低地の家は、昔から水を浴びていた可能性があります。近隣に比べて土地の標高が低いエリアは地盤が軟弱な可能性があります。坂道の下の家などですね。
こういったエリアは、周辺の戸建てもすでに傾いていることが多いので、周辺の戸建てを外から眺めてみるのも有効です。
川や海沿い
また、川や海の近くも、昔から水を浴び続けたと推測ができますので、地盤は弱い傾向が強いです。東京ですと、昔は海だった埋め立て地はかなり地盤が弱いです。ハザードマップなども参考になります。
擁壁の上の家
擁壁の上の物件も、不同沈下の可能性があります。擁壁の物件は、宅地造成で山を切り崩して、階段状に整形しているため、整形の為に新しい土を入れています。
この新しい土が、年月を経るごとに圧縮されていって、家が傾いてしまうのです。擁壁が家の重みに耐えられず膨らんでしまうこともあります。「はらむ」と言われていますが、擁壁がはらんでいる場合は、家が傾いていることが多いです。
POINT
・建築時期が平成12年4月より後であれば、地盤補強をしている可能性が高い
・低地、川沿い、海沿い、埋め立て地は地盤が弱い傾向がある
・擁壁を抱えている物件は、新土が圧縮されて不同沈下リスクあり
居住中に傾きが生じてしまった場合
施工不良の傾きの場合は、その施工不良の箇所だけ修正すれば簡単に治せます。直し方としては、レベル調整といって、下地を水平に作ってから、フローリング材を貼る方法や、床の根太から作り直す方法などがあります。
不同沈下の傾きの場合は、全体が傾いているので、レベル調整だと、建具の枠と床が水平にならなくなってしまうので、この方法は基本的には使えません。
家の土台から上げてその隙間にコンクリートを流し込む、土台揚げ修正工事や、基礎の下から家を持ち上げて、そこにコンクリートを流し込む基礎上げ、地盤に薬液を注入する方法などがあります。家を底から持ち上げる工法です。
費用としては、土台揚げが一番安く済みますが、地盤の強さが変わりませんので、根本的な解決策にはならない場合があります。
筆者がこの業界に入って最初に扱った物件が、傾いている家でした。
競売で落札したのですが、競売の説明書には「ビー玉が少し転がる傾きがある」との記載でしたが、実際に現地に入ってみると、ビー玉どころかバスケットボールでも転がってしまいそうなビックリハウスのような傾きです。
階段をのぼっていると、自然に壁に体をぶつけてしまうほどの傾きに焦った思い出があります。後で調べてみると、そこはもともと沼地で、その沼地の水を抜いて宅地分譲をした土地だったようです。
もちろん、こういった土地でも、最近建築された家を買う分にはそれほどリスクは無いのでしょうが、中古で古い物件を購入する際には、気をつけましょう。