賃貸借契約を不動産会社の仲介で締結するときに、「この物件には抵当権が設定されています」と説明された人は多いと思います。この説明はどういった意味があるのでしょう?
今回は、この様な物件を賃借しているとどういうことが起きるのか?についての話です。
※重要な判断に関与する記事です。判断をされる際には、必ずご自身で専門家等に事実確認をお願いいたします。
オーナーが破綻してしまったら?
抵当権とは?
まず、抵当権についての解説です。抵当権とは、簡単に言うと、不動産担保です。例えば、金銭を貸す代わりに、不動産を担保にして、返済が滞ったら不動産を強制的に売却させて、その売却代金で貸した金銭を返還してもらう。といったときに使います。
抵当権は、民法で定められている権利で、その性質も基本的には民法に従います。
では、抵当権を設定した場合、抵当権者は何をできるのでしょうか?
1、被担保債務が不履行となったときに、競売という仕組みを利用できる
2、競売による売却代金から優先的に弁済を受けられる
3、抵当権設定登記ができ、登記した後は第三者にも対抗可能となる
抵当権者ができることは、大きくこの3つとなります。
つまり、抵当権の設定をして、登記をした場合、第三者の有無にかかわらず、担保不動産を競売にかけ、換価代金で債権の回収ができるということです。抵当権の登記がされた後は、賃借権をもってしても、対抗することができません。
抵当権に劣後する賃借権
この、抵当権の設定登記がされた後の賃借権のことを、抵当権に劣後する賃借権と言います。
劣後する賃借権は、基本的に抵当権には対抗できませんので、仮に競売にかかって、新たな競落人がオーナーになった場合、その賃借権を主張することができません。
賃借権を主張できないという事
賃借権を主張できない、という事は、簡単に言うと、有無を言わさず退去しなければならない。という事になります。要するに、オーナーが破綻した場合は強制退去リスクがあるという事です。
ただ、流石にすぐに退去することは難しいので、競落人が買受の日から半年間は建物の明渡しが猶予される制度はあります。もちろん、その期間の賃料相当額を支払わないと、この権利主張はできません。
賃借権を主張できないということは、敷金の返還や有益費の償還請求もすることができなくなります。この敷金等は破綻した前オーナーに請求しなければなりませんが、破綻しているので回収は難しいでしょう。
なお、交渉の上、新たに賃貸借契約を締結することは可能ではありますが、敷金や保証料等新規契約に必要な費用の負担は賃借人側が負う事となります。
このように、抵当権に劣後する賃借権は、オーナーの破綻リスクを負う事となります。
ほとんどの不動産は、抵当権の担保となっているので、基本的にはどの物件も劣後していると考えていいと思います。
不動産賃貸借契約をする際に、必ず説明がされる事項なので、劣後する場合は、あらかじめ想定しておいた方がよい事柄です。
オーナーに賃料減額をしてしまうと、こういったリスクが生じることもありますので要注意ですね。